河井隼雄「母性社会日本の病理」講談社+α文庫

母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)

母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)

p36「現代の社会に生きる“永遠の少年”たちは・・・ユングの弟子の一人フォン・フランツはそのようなイメージを見事にスケッチしている。彼らは社会への適応に何らかの困難を示しているが、彼らは自分の特別な才能を曲げるのが惜しいので、社会に適応する必要はないのだと自らに言い聞かせたり、自分にぴったりとした場所を与えない社会が悪いのだと思ったりしている。ともかく、色々考えて見るが、いまだその時がこない、いまだ本物が見つからない、と常に「いまだ」の状態におかれたままでいる。」
p41「・・・宗教史学者のエリアーデが指摘しているように、“伝承社会と対比して近代人のもつ斬新さとは、まさしく、自らを純粋歴史的存在として認めようとする決意と、根本的に非聖化された宇宙に生きようとする意志にかかってくる”ので、“近代世界の特色の一つは、深い意義をもつイニシエーション儀礼が消滅し去ったことだ”ということになる」・・・ある個人が根元的な体験をもって大人に「成った」ことを自覚することが非常に困難になったのである。あるいは社会的にみれば、「永遠の少年」の増加による問題をかかえることになった。」